知っているものと使えるもの
明日のためのその181 「習熟度」
ここまで単語についてはかなり詳しく見てきました。これは自分がボキャビルに苦労したためです。
単語の習熟度という問題があります。
以前もお話したように、僕はずいぶん長い間単語を軽視していました。全て覚えるのは無理なんだからと、最初から覚えることよりも文脈から推測することに重点を置いていました。そしてリスニングやリーディングではその推測力が威力を発揮したのです。
さらに初めてのTOEICで結果が出てしまったことで、「やっぱりこのやり方でいいんだ」と自分の中でこの方法が絶対化されました。
インプット(リスニングとリーディング)の際は、なんとなくニュアンスがわかる程度の単語が数多くあれば対応できます。広く浅い知識です。その広くて浅い知識を増やすことのみに集中したのです。
アウトプット(ライティングとスピーキング)の中でもライティングの際は、辞書を引いて調べながら書くことだってできます。ですからこのやり方で問題が出てくるのは、そのような余裕のないスピーキングの場合です。
当然ながら読んで意味がわかるものと、会話のような切羽詰った状況で瞬間的に出すことができるものとの間、つまり知っているものと実際に使えるものとの間には大きな壁があります。
なんとなくニュアンスがわかるものをたくさん知っているよりも、数は限られていても確信を持って使えるものがあるほうが、自分で発話するときには遥かに役に立ちます。bookやflowerと同じぐらい楽に使えるものを増やすことが必要なのです。
自分の場合は上の理由で、広く浅く知っている単語が極端に増えてしまい、読んだり聞いたりする場合はかなり高いレベルのものを理解できても、話してみると3歳児レベル、というような状況が長く続きました。
そりゃ3歳児レベルという烙印を押されて、その屈辱に耐えながらちんたらしゃべるよりも、そこそこできる読み聞きで触れられるもののほうが遥かに面白いですし、自己満足も得られるものですから、よりいっそう聞くこと・読むことに集中する→さらにそのギャップが広がってしまうという悪循環に陥りました。
その後、英検一級のために単語を一からやり直して、ようやく自分が本当に言いたいことが言えるようになってきました。それまで「なんとなく知っていた」レベルの単語に対する習熟度が上がって、自分でも使えるようになったためです。
このような偏った上達の仕方をする方はなかなかいらっしゃらないでしょうが、文脈からの推測に役立つ広く浅い単語を増やすとともに、アウトプットで使えるぐらい習熟度の高いものもバランスよく増やすのが理想です。
もちろん全てを「使えるレベル」にすれば言うことないのですが、それはかなり難しいですよね。ですから実際の会話で自分が使えそうな(使ってみたい)単語に出会ったら、念入りに覚えて自動的に出るレベルにまで高める、そうでないものは「これは読んでわかれば十分」と割り切って、だいたいのニュアンスを覚えるというやり方がいいのではないでしょうか。覚え方に濃淡をつけるわけですね。
そうやってバランスよく単語を増やすために、単語編で書いたことを参考にしていただければ、ここまで苦労した甲斐もあるというものです。
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語源を知る
あしたのためのその180 「単語の成り立ち」
前回の更新からずいぶん間が開いてしまいました。
単語についてもう一つだけ言わせてください。単語の語源を知っていると、未知の単語の意味を推測するときに大いに役立ちます。英単語の約70パーセントがラテン語など他の言語から来ていると言われています。
アルクの語源辞典をご覧ください。「英語耳」の著者である松澤さんが語源についてわかりやすく説明されています。特に「語源の扉」というコラムには、いろんな単語の成り立ちにまつわる興味深い話もたくさん載っていますので、それを読んでいるだけでも結構な数の単語を覚えられるはずです。
これに接頭辞と接尾辞を組み合わせると推測できる語の数が一気に増えます。元になる言葉(語根)の前につくのが接頭辞、後につくのが接尾辞です。
例えば「cept」には「捕まえる」・「容れる」という意味があります。ですから例えば「ac-(〜に)」という接頭辞とくっついて「accept」となれば「受け入れる」に、「ex-」(外に)とくっついて「except」ならば「除く」に、「inter-」(〜の間に)とくっついて「intercept」なら「さえぎる」となるわけです。なんとなくニュアンスがわかりますよね。
こうすればこれらの単語間には「同じ語源を持っている」という付箋がつきますので、複数の単語を関連付けて覚えることができます。つまり推測ができるようになるだけでなく、記憶のメカニズムにも合致していますので、単語を覚えやすくなるという利点もあるわけです。ばらばらに覚えるより遥かに負担も軽くなりますしね。
ここまで単語についてたくさん書いてきましたので、どれをやっていいのか混乱してしまっている方もいらっしゃるかもしれません。何年間もかけてやってきたことですので、こうしていっぺんに見るとおなかいっぱいになってしまうということもあるでしょう。
単語編の最初にお話したように、僕自身は読んだり聞いたりしている中で知らない単語が出てきたら、それを文脈の中で覚えていくというやり方でずっと通していました。
そのやり方である程度までは行けるはずです。そして行き詰ったときに単語を集中的に増強してみればいいと思います。ここには単語を覚えるのに役立ちそうなことを全て書いてきました。
単語で困っている方にとって、この中のどれか一つでもヒントになればいいなぁと思っています。もしいいなと思うやり方がありましたらぜひ試してみてください。実践なくして上達なしですからね。
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英英辞書で 後編
あしたのためのその179 「ロングマン」
Aから順番に本当によく知っているものだけ選んで見ていっても、一周する頃にはかなりのボキャブラリーが身につくはずです。また、英英辞書の説明のスタイルにも慣れます。もちろん以前お話した後置修飾にも。英語を読む力だってついていきます。
名詞だけでなく動詞や形容詞も見てください。例えば「believe」ならオックスフォードでは
believe: accept that something is true, especially without proof
と定義されています。「なるほど、証拠なしでもかぁ」など、ただ「信じる」とだけ覚えていた方にとってはeye-openingな発見も多くあるはずです。
最初は本当によく知っているものだけ、そして一周したらまぁまぁ知っているもの、それが終わったら聞いたことがある程度のレベルのものまでと、少しずつハードルを上げていけばいいのです。
調べたものをチェックしておくと、ページ内に知っている(というよりすでに読んだ)単語が増えていくのが視覚的にわかって励みになるかもしれません。紙の辞書はこれができるのがいいところですよね。どんどん書き込みして自分だけの辞書にできるところが。
ここではオックスフォード英英辞書での定義をご紹介しましたが、ロングマンのほうがわかり易い英語で説明してありますので、ここに書いた方法を試すのであればこちらのほうがいいと思います。オンラインで使えるものもあります。
Longman Dictionary of Contemporary English Online
ロングマンの使い方については僕の中で権威とも呼べる方がいらっしゃいますので、「30歳からの英検一級」の『「ロングマン」の使い方』をぜひお読みください。
例えば「predict」や「anticipate」なんて学生時代、両方とも「予測する」って覚えませんでした?でも英英辞書でしかわからない細かいニュアンスの違いがあるんですよね。その例の選び方、そしてその説明が秀逸です。
ただね、最初は一緒だと覚えていいと僕は思うんですよ。文法のときにもお話ししましたが、初めのうちは最低限のことをだいたい覚えていき、もっと細かく言いたいことを伝えたい、人が言うこと・書いてあるものをもっと深く味わいたいという段になったら細かい表現の違いを学ぶようにすればいいと。
まだ続きます。
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英英辞書で
あしたのためのその178 「知らないもの地獄」
「英英辞書を使って単語力増強を図れば英語を英語で理解できるようになる」とどこかで入れ知恵されて勇んでトライしたものの、すぐにうんざりしてやめてしまったという経験はありませんか?
そしてその失敗のほとんどが、それまで使っていた英和辞書と同じ使い方をしてしまったことが原因ではないでしょうか。
すなわち、意味がわからないものを英英辞書で調べる→その説明にまた意味のわからない単語が登場する→その単語を調べるとまたまた意味がわからない単語が登場する→笑うしかないというパターンに陥っていると思われます。
まさに無限地獄。結局知りたかった単語の意味がわからなかっただけでなく、知らないものがまた増えてしまい、おまけに挫折感まで背負い込んでしまって呆然とする、これでは続くわけありませんよね。
なんでこうなるのでしょう。それはわからないものを調べるからです。すでによく知っている単語を調べるのに使えばこうはならないはずですよね。「ant」とか本当に簡単なやつを。そうであれば、その説明もすんなりわかるはずです。
たとえそこに知らない単語がでてきても、その周辺知識が推測を助けてくれますから「知らないものアリ地獄」にはまらずに済みます。
例えば「ant」ならオックスフォードでは
ant: a small insect typically having a sting and living in a complex social colony with one or more breeding queens.
と定義されています。うまいと思いません?colonyなんかもこれ単体で使われるよりも、アリの説明だと知っていればその知識が理解を助けてくれてわかりやすいはずです。
なるほど、これをこう説明するかぁと面白がっている間に結構読めてしまいます。過去に英英辞書であり地獄にはまったことがある方はぜひ一度このやり方をお試し下さい。
もう少しだけ続きます。
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マジカルナンバー
あしたのためのその177 「ひとかたまりで」
試験などで単語を大量に覚えなくてはならないときもありますよね。ここまで見たようにストーリーや文脈の中で覚えるのが一番いいのですけれど、あいにくそんな都合のいい教材もなくて、ただ覚えなくてはならないというときが。
こういうとき、ご存知の方も多いでしょうが「7プラスマイナス2」というマジカルナンバーを知っておくと便利です。人間が記憶できる情報は「7プラスマイナス2」、例えば数字を記憶するときなど、一度に記憶できるのはプラスマイナス2個程度の増減はあってもだいたい7個だということです。
「001964853712」という数字の並びを覚えようとするときは、全部を一気に覚えるよりも、「001964」「853712」というかたまりに分けたほうが覚えやすいですよね。こうすればそれぞれ6けたと、マジカルナンバーに収まります。
さらに細かく「0019」「6485」「3712」と分けるともっと簡単に覚えられるはずです。かたまりを小さくすることで一度に覚えるべき負担が減る上に、音も「7プラスマイナス2」音節に収まるようになるためでしょう。
かたまりごとの音節数を「ゼロゼロイチ…」のように数えていくとそれぞれ7・6・6となっており、上の「7プラスマイナス2」というマジカルナンバーに収まります。電話番号だってそうやって覚えていたはずです。
ためしに昔覚えた九九を全部言ってみてください。こちらも全てが9音節に収まりますよね。最難関の「ハチシチゴジュウロク」だってそう。だから覚えられたのでしょう。
そしてひとつの音のかたまりとして記憶をしているから、いちいち計算せずとも「ハチシチ」と聞いた瞬間に、「ゴジュウロク」と続けることができるわけです。
大量に単語を覚えるときにはこれを応用すればいいのです。「単語」と「意味」をひとかたまりで覚えてしまうのです。最大9音節(できれば7音節)に収まるように。まるで一つの音のかたまりのように。
例えば前回出てきた「obtuse」だったら「obtuse鈍い」という感じで。全部で5音節ですから入り易いですよね。そうすれば九九のときと同じように「obtuse」を聞いた瞬間に「鈍い」が浮かぶようになるでしょう。
以前にも述べたように、カタカナ発音では余計な母音が加わって不必要に音節数を増やしてしまいます。そうなると単語だけで音節数を占めてしまい、意味までも含めることができません。そういう意味でも正確に発音することは必須です。
続きます。
どうですか、この更新頻度の低さ。そろそろ限界でしょうか。
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